痛みを超えたその先で、新しい自分になる。
『リカバリー・カバヒコ』
青山 美智子
光文社(2023)
2024年の本屋大賞ノミネート作品…
ということで、気になっておりました。
表紙に描かれた涙目のカバヒコを見るだけで、なんだかキュン。笑
連作短編集で、5話の構成です。
昼休みのリカバリーとして、1話だけ読むのもアリですね。
午後からも、ぼちぼちやるかな、と思えちゃう。
「日の出公園」に昔からある古びたカバの遊具、カバヒコ。
カバヒコには、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復する、という都市伝説がある。
人呼んで、”リカバリー・カバヒコ”。
カバだけに。
このカバヒコの元に、頭を治したい、口を治したい、とそれぞれの話の主人公が訪れます。
どの主人公もみんな、素直だと思いませんか?
だって、「リカバリー・カバヒコ」は都市伝説なのに。
どの主人公も、「リカバリー」するのですが…
そのきっかけは、自分の身の回りで起きる事から得るヒントだったりします。
「ああ、そうか。」という気づきに対しても素直。
そんな素直さが、自分で自分を治す力を後押しするように思えました。
自然治癒力、という言葉が頭をよぎります。
自分で自分を治す、と表現してふと気がつきました。
どの主人公も自分で勝手に傷ついて、自分で不調になっている、とも言えそうなのです。
自分で患って、自分で治る。
じゃあ、何の意味もない?…わけでも、ない。
回復の前後で違うのは、経験と記憶がつくこと。
体も、心も、頭も、前とは違う自分になる。
第4話の中で言われていました。
備わった経験が、未来の自分を助けるかもしれない。
誰かに寄り添うための想像力を養うかもしれない。
カバヒコは遊具だから、いつもそこにいるだけ。
それなのに、読み終わる頃には「大丈夫だよ。」と涙目で語っているように思えてしまって、愛着が沸きます。笑
リアルカバヒコが書店を巡業中みたいなのですが…
近くの書店にも来て欲しいなあ。
初めて読んだ青山さんの作品は『お探し物は図書室まで』だったのですが…
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他の作品もまだまだ読んでみたい…!
(2024.07.22 追記)
『木曜日にはココアを』読みました。
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