空模様、私模様。

『空の絵本』
作 長田 弘
絵 荒井 良ニ
講談社(2011)
『あさになったので まどをあけますよ』
と同じく、見ているだけで癒されます。
まずは絵を眺めるのを楽しんで、読むのはその後、が個人的には好きです。
雨から始まります。
雨上がりの方が、単純な晴れより清々しく感じる気がします。
変化していく空模様。
だんだん、だんだん。
「だんだん」を時の経過だけでなく、雷の音にも使っていて、言葉遊びの要素もありました。
風雨や雷も、
雨上がりも、
葉の上のしずくも、
夕焼けも、
いちばん星も、
広がる夜空も、
大きなお月さまも、
どれも印象的…
好きなページは日によって変わりそう。
今日、一番好きなのは、空いっぱいの星たちのページ。
中表紙の絵を初めに見たとき、何の関係があるんだろう、と思ったのですが、星空のシーンとリンクしているんですね。
たくさんの物語を散りばめたみたいな星空だなあ。
終盤に大きな満月が出てくるのですが、なんだか鏡みたいに見えて、急に自分と向き合った感覚になりました。
ああ。そっか。
書きながら気づいたのですが、空模様って、心模様みたいですよね。
最後に鏡のように大きな月を前にして、「今日、どう感じた?」を思い出しながら…
だんだん、だんだん、
眠りにつきましょうか…。
てつぞうはね

『てつぞうはね』
ミロコマチコ
ブロンズ新社(2013)
のびのびした絵が素敵です。
しろくてふかふかの猫ちゃん。
てつぞう。
ややお顔がふてぶてしいところがキュートです。
身体が大きく、洗面台もお風呂マットもどかん、と占領しちゃう姿には思わず笑ってしまいます。
小学4年生の娘も、お風呂マットのシーンが一番好き、と言っていました。
大きな背中をこちらに向けて、しっぽでお絵描き(?)している姿も、いたずらしていると分かってやっていそう。
猫っぽくていいですね…♡
はる、なつ、あき…と季節が過ぎ、お別れの時が来ます。
黄色い光に包まれているのですが、『オレときいろ』とは違う黄色でした。
パワフルというより、あったかい。
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新しくお迎えした子猫たちの様子は、てつぞうに語りかけるように描かれます。
どこかできっと見ているよね、という思いがあるのかな。
新入り猫ちゃんズが初めて出てくるシーンでは、黄色い光に包まれているのですが…
てつぞうが旅立つ時に溢れていた黄色い光と同じ気がして、胸がきゅっ、となりました。
どこかで見ているというより、一緒にいるよね、ってことなのかも。
『みえないりゅう』も気になるので、図書館で予約しました。

かなしみも私の一部だもんね。

『かなしみがやってきたらきみは』
作 エヴァ・イーランド
訳 いとう ひろみ
ほるぷ出版(2019)
図書館の大人向け絵本コーナーで。
悲しみとの付き合い方。
まずは、しらんぷりしないこと。
そっと受け入れてあげる。
描かれている悲しい時の対処法が、どれも一人でできることなのが素敵だなあ、とも思いました。
絵を描いたり、
音楽を聴いたり、
散歩をしたり。
「私は悲しいのよ、慰めてちょうだい」
と誰かにすがったりしない。
自分で自分の感情に寄り添うことができる強さも感じました。
絵柄は優しい感じなんですけどね。
でも一番好きなのは裏表紙の見返し。
本文より好き。
表紙と本文に描かれている男の子だけでなく、老若男女(そして猫も?)みんなそれぞれのスタイルでかなしみと向き合っている。
いろんな人がいろんな形でかなしみを大事にしている感じがして、なんだか泣けました。
それって、自分のことを大事にしてるってことだよね?
あなたなら悲しいときどうしますか?
やっぱり本でも読むのでしょうか。
ふるえる、ふえる。

『地球星人』
村田 沙耶香
新潮社(2021)
なんという作品を読んでしまったんだ…
と呆然とする。
そんな読後感でした。
生き延びるためには、世界が求める役目を果たさなければならない。
働き、産み育てる、部品。
いっそ何も不思議に思わないくらい、洗脳されきってたら、楽なのに。
あまり表には出さないかもしれませんが、この感覚がわかる人は結構いるんじゃないかな、と思います。
みんな大人だから、見えないフリ、知らないフリをしているだけなのかもしれません。
繁殖ではなく伝染、という表現がものすごく好きでした。私の中では「共振する」という言葉が出てきました。
ふるえる、と、ふえる。
おもしろくて新しい感覚を持った人がふえると、素敵。
忘れられないのは310ページ。
この日、私の身体は全部、私のものになった。
窓の外では、雪が降り始めていた。部屋の中の蠟燭の光を反射して、白く光る粉が、宇宙から舞い降りている。
私は蚕の鱗粉を思った。無数の蚕が部屋から飛び立って、鱗粉を撒き散らしながら飛んでいく光景を想った。
真っ黒な空から落ちてくる雪は、地面を真っ白に染め上げていった。雪は外の生き物の気配を覆い尽くし、蠟燭が揺れる部屋で、私たちの食事の音だけが、途切れることなく続いていた。
奇妙さと美しさが共存しているような。
最初はそんな感じがしました。
いま一度読んでみると、「無数の蚕が部屋から飛び立って、鱗粉を撒き散らしながら飛んでいく光景を想った。」は「思った」ではなく、「想った」なんですね。
蚕って、飛べませんよね?
飛べはしないけど、飛んでいって欲しい。
だから、「想った」なのかなあ、と。
もう少し蚕に着目して読み直したら、また新しい発見がありそうだなあ、と思います。
いまはちょっとお腹いっぱいなので、少し期間をおいて。笑
これも読みたいな。

温かく優しく身体に染みていく

『木曜日にはココアを』
青山 美智子
宝島社(2019)
図書室、カバヒコに続き、またまた青山さんの作品。
12人、12色、12話の短いお話が、「マーブル・カフェ」から始まって、バトンのように繋がっていく。
どの話も素敵ですが、私は9話「帰ってきた魔女(ターコイズ)」が好きでした。
魔法、ちちんぷいぷい、植物や自然の力。
この世界で息吹くものは、みんなみんなつながっているのだった
これを表現するために12話のショートストーリーに落とし込んだのかな?
あれ?ターコイズってもしかして地球っぽい?
などと、想像が膨らみました。
どのお話もじんわり温かい。
優しく身体に染みていくような…
ああ、そっか。
木曜日、午後3時頃、ホットココア。
まさしく、そんな感じ。
少し肌寒くなったら読み直したいです。
ホットココアをお供に。
図書館で借りずに買えばよかった…。笑
続編『月曜日の抹茶カフェ』も読みたいです。

はみ出しちゃいそなエネルギー

『オレときいろ』
ミロコマチコ
WAVE出版(2014)
き、きいろい…!
表紙に思いっきり使われた黄色、それからねこちゃんのお顔が気に入って図書館で借りました。
蛍光イエローでしょうか?
とにかくこの黄色を使いたい!という気持ちが先で、ストーリーが後から追いかけてきたのかな?という印象を持ちました。
表紙だけでなく、ページをめくってもめくっても、どこかにきいろ。
とってもエネルギッシュで、本からはみ出しちゃいそうだなあ、と思いました。
絵だけでなく、文字も手描きの方がどうやら好きらしい、という自分の傾向にも気がつきました。笑
せめて、背表紙・表紙のタイトルだけでも手描きだとテンションが上がります!
きいろに翻弄されて、息が上がって横になっているねこちゃんの描写も好きでした。
はへ、はへ。
ミロコマチコさんの描くねこちゃんが素敵だったので、他の作品も見たいです。

表紙からすでにかわいい…♡
(2024.07.29 追記)
『てつぞうはね』も読みました。
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わたしだけの新しい日にごあいさつ

『あさになったので まどをあけますよ』
荒井 良二
偕成社(2011)
とにかく色づかいが大好きです。
どのページも「ひかり」「きらめき」「よろこび」が満ちていて…
それだけで、涙が溢れます。
まずは文字を読まないのが個人的なオススメです。笑
絵を眺めては、めくっては…の心地良さにひたってほしい。
それぞれの生きている場所で、それぞれの朝を迎える。
夜には落ち込んで泣いていたかもしれない、不安で寝付けなかったかもしれない。
それでも、朝が来る。
新しい日。
絵本の中では窓を開ける瞬間や広がる景色が描写されていますが、私はそこに至る部分まで想像してしまいました。
目が覚めると、外が明るい。
ああ、朝だ、と認識する。
ゆっくり起き上がる。
きっと身体はまだ重たいだろうな。
のたのたと光の差す方へ歩いていく。
まずはカーテンを開けて、窓を開ける。
そして…という感じなのかな、と。
窓を開けて広がるのは
いつもと同じ場所、見慣れた景色。
そこに、ちょっとだけ新しさを含んだ空気が流れてくる感覚を味わう。
何気ない瞬間なのに、多幸感に包まれる。
きょうは だいすきな きのしたが わたしのへや
いつも かぜが ふいていて
やっぱり わたしは ここがすき
この
「やっぱり」
という表現もいいですね。
それから、「ここ」は生活している場所のことだけを言っているのではないように感じました。
自分の身体のことを「ここ」と表現しているのかも。
唯一無二のこの身体で、自分にしか体験できない新しい日にごあいさつ。
「あさになったので まどをあけますよ」
荒井さんの絵本、他にも気になっております…!
